
「性行為で感染する病気」を総称して、性感染症(STI)といいます。
ウイルス、細菌、原虫などが、性器、泌尿器、肛門、口腔などに接触することで感染します。
しかし、症状に乏しいことや、全く無症状ということもあり、気がつかない間に感染し、また、他人に移していることがあります。
性感染症に罹ることは、心当たりがあったりなかったりするでしょう。
自分だけの問題ではない、性感染症。隠さず、まず検査で調べましょう。
性感染症を理解しよう
性感染症は、性行為によって感染した人の精液や膣(ちつ)分泌液の他、性器、泌尿器(ひにょうき)周囲等の病原体や分泌液に直接触れることによって感染します。
性感染症の病原体(細菌やウイルスなど)は、主に感染した人の精液、膣分泌液(ちつぶんぴつえき)などに存在します。
セックスと言ってもいろいろある
性行為の多様化が見られる現代においては、「セックス」といっても様々です。
「性行為」には
膣(ちつ)性交
口腔(こうくう)性交(オーラルセックス)・・・フェラチオ・クンニリングス
肛門(こうもん)性交(アナルセックス)
があります。
性感染症はどうして広がるの?
性感染症は、病原体を含む分泌液(精液、膣分泌液、血液など)が、体の粘膜に付着することで感染します。
そのため、一般的な膣性交でなくても、オーラルセックスなどで感染する可能性もあるのです。
フェラチオやクンニリングスなどのオーラルセックスは、性器を口に咥えたり舐めたりすることで体液が口の中に入ることになります。
往々にして、お互いの体液は交換し合います。
なので、男性・女性関係なくパートナーの性器が性感染症に感染していれば、感染の可能性があります。
また、淋菌、クラミジア、ヘルペスなどの病原体が口の中に感染していた場合は、その病原体が相手の性器にうつり、パートナーを感染させることもあります。
性器の感染症は性器にだけ感染するのではなく、「口」にも感染することがある上に、症状が出ないことも多いため、知らないうちに感染していたり、感染させたりしてしまう危険性があります。
性感染症にはどのようなものがあるのか
主に挙げられる性感染症には、以下のようなものがあります。
梅毒
尖圭コンジローマ
B型肝炎
淋菌感染症
腟トリコモナス症
C型肝炎
性器クラミジア感染症
ケジラミ症
後天性免疫不全症候群(エイズ)
性器ヘルペス
性器カンジダ症
これらの性感染症は複数の感染を被ることが多々あります。
また、複数の性感染症を合併する時には、エイズのように免疫が低下する疾患に罹患しているかどうか念のためチェックする必要があります。
性感染症の予防方法は?
考えられる性感染症の予防方法には、以下のようなものがあります。
① セックスをしない
当然ながら、セックスをしなければほぼ、性感染症にはかかりようがありません。
セックスをしないという選択も、感染しないための重要な方法です。
② 特定の相手のみとセックスをする
お互いが性感染症に感染していないことが確実で、不特定多数の相手とのセックスをしなければ、感染のリスクは無く、安全です。
しかし、今は特定の相手しかいなくても、過去に他の人と性的接触があれば、症状がないだけでもしかしたら過去の相手から感染しているかもしれません。
新しいパートナーができたときなどは、お互いにしっかり検査/治療を受けることが大切です。
③ コンドームを使用する
正しくコンドームを着用することで、性感染症を効果的に予防することができます。
しかし、コンドームの使用は感染や妊娠を100%防いでくれるものではありません。
コンドームは正しく使用することがとても重要です。
コンドームの使用期限を守り劣化したものは使わない、爪などで傷つけないなど、正しく使うことで予防効果を高めることができます。
ヘルペスのように粘膜を介さなくても皮膚と皮膚の接触でも感染するものについては、コンドーム等では防ぎきれない場合もあります。
そのため、性器や口腔周囲に違和感・異変を感じる時はキスや性行為(オーラルセックス等を含む)をせず、早めに検査を受けることを勧めます。
沢山セックスをしていると移りやすいの?
相手が性感染症に感染していないと確定していない場合、性行為の回数が多ければ多いほど、性行為の相手が多ければ多いほど、感染するリスクはもちろん高まります。
しかし、たった1度のセックスであっても、感染する可能性はあるのです。
例えば、クラミジアは1度の性行為で感染する確率は30%~50%と言われています。
そしてそのクラミジアは、日本国内の感染者数は40万人以上いると言われており、とても有りふれた感染症です。
行きずりの相手とのワンナイト、その晩は楽しかったかもしれませんが、後で後悔することになるかもしれません。
きちんと検査をしておくことが大切です。
どんな検査を行うのですか?
女性の場合は、クラミジア、淋菌、カンジダ、トリコモナスは腟や子宮の入り口のおりものを採取して検査します。
HIV、梅毒、性器クラミジアの有無は採血して血液検査をします。
クラミジア、淋菌、HIV、梅毒の血液検査は結果がわかるまで4~5日かかります。
性器ヘルペスと尖圭コンジローマは視診だけでわかります。
性感染症の検査の費用について
性感染症の検査にかかる費用をしっかり把握して、検査を受けましょう
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性病予防にもなるワクチン、HPVワクチンを男性も打とう
HPVは多くのタイプがありますが、子宮頸癌の予防に有用であることは良く知られています。しかし、2020年12月、厚生労働省が認可し、男性も自費であれば接種可能になったことはあまり知られていません。
HPVは子宮頸がんの原因となるだけでなく、男性もかかる中咽頭がん、肛門がん、陰茎がんなどの原因にもなります。
また、尖圭コンジローマという性病の原因ウイルスでもあります。
そのため、世界では77か国が男子接種を承認し、アメリカ、イギリス、オーストラリアなど24か国で公費接種も行われています。
日本では、これまでは子宮頸癌への感染を防ぐ目的で日本では女性のみが接種対象となっていましたが、男性へ接種対象が拡大されたのです。
性的な行為で男女で移し合うことがわかっていますので、9歳以上で、かつ、初めての性行為の前に接種することが効果的と考えられます。
ワクチン名:ガーダシル®(4価)
・接種回数:3回
・接種方法:筋肉内注射
・接種対象者
女性の場合
公費対象:小学6年生から高校1年生
自費(17000円/回):上記以外の9歳以上の女性
男性の場合
自費のみ(17000円/回):9歳以上の男性
なんとなく放置していた、性病への関心。性感染症は自分だけの問題ではありません。
パートナーとの関係性を良好に保つためにも、きちんと検査を行い、必要な対応を早くするようにしましょう。