「熱や喉の痛みはおさまったのに、咳だけがずっと続いている」 「夜、布団に入ると咳き込んで眠れない」 「市販の咳止め薬を飲んでも、一向に良くならない」
このような症状でお悩みではありませんか?長引く咳は体力を奪い、日常生活や睡眠に大きな支障をきたすため、本当にお辛いですよね。
「そのうち治るだろう」と様子を見てしまいがちですが、実はその咳、ただの「風邪の残り」ではないかもしれません。
今回は、長引く咳の裏に隠された原因と、正しい治療の重要性について呼吸器専門医の視点から詳しく解説します。
長引く咳の原因、実は「約8割」がアレルギー疾患!
「咳=風邪」というイメージが強いかもしれませんが、持続する咳の原因を調査したデータ(Niimi A, et al. J Asthma. 2013)によると、非常に驚くべき事実が分かっています。
なんと、長引く咳の原因の8割近くが「アレルギー疾患」なのです。

具体的な内訳を見てみましょう。
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咳喘息(せきぜんそく):42.2%
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気管支喘息:28.4%
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アトピー咳嗽(がいそう):7.3%
これらアレルギー性の気道疾患が上位を占めており、感染症の後に続く咳(感染後咳嗽)はわずか6.7%に過ぎません。
つまり、長引く咳の多くは細菌やウイルスのせいではなく、「気道のアレルギー反応」によって引き起こされているのです。
なぜ普通の「咳止め」が効かないのか?
長引く咳に対して、市販の咳止め薬(鎮咳薬)を使用しても効果が感じられないことが多いのはなぜでしょうか?
それは、根本的な原因が「気道の慢性的な炎症(アレルギー)」にあるからです。
一般的な咳止め薬は、脳の咳中枢に働きかけて一時的に咳を抑え込むものであり、気道の炎症そのものを鎮める効果はありません。
火事に例えるなら、咳止め薬は「火災報知器の音を止めているだけ」の状態です。火の元(気道の炎症)を消し止めない限り、咳はいつまでもくすぶり続けてしまいます。
もしかして「咳喘息」? セルフチェックのポイント
アレルギー性疾患の中でも多い「咳喘息」。
一般的な気管支喘息のような「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった呼吸音(喘鳴:ぜんめい)がないのが特徴です。
以下の診断基準や特徴に当てはまる場合、咳喘息の可能性が極めて高くなります。
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咳が長期間続いている
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喘鳴を伴わない咳が8週間以上続いている。
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(※3週間以上でも咳喘息を疑いますが、3週未満では確定診断はしません)
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気管支拡張薬が効く
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ホクナリンテープ(ツロブテロール)などの気管支を広げる薬を使うと、咳が劇的に楽になる。(一般に、3週以上続く咳で気管支拡張薬が効く場合は、ほぼ咳喘息と考えられます)
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その他の特徴(参考所見)
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夜間から明け方にかけて咳がひどくなる。
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季節の変わり目や、寒暖差(日差)で咳が出やすい。
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血液検査や呼気NO(一酸化窒素)検査でアレルギー反応の数値が高い。
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「たかが咳」と放置する危険性
「咳が出るだけで、息苦しくはないから…」と咳喘息を放置するのは非常に危険です。
適切な治療を行わず気道の炎症を放置すると、本格的な「気管支喘息」へと進行してしまうリスクがあります。
正規の喘息へ移行してしまうと、激しい咳に加えて呼吸困難を引き起こし、最悪の場合は「呼吸不全」に至る恐れもあります。
根本から治す「吸入ステロイド薬」の重要性
長引く咳(咳喘息など)には、気道の炎症を直接鎮める「吸入ステロイド薬」を中心とした治療が極めて有効です。
ステロイドと聞くと副作用を心配される方もいらっしゃいますが、吸入薬は気管支の表面にだけ直接作用するため、飲み薬のステロイドに比べて全身への副作用は非常に少なく、長期間でも安全に使用できるお薬です。
咳が3週間以上続いている場合は、「ただの風邪」と自己判断せず、専門的な検査と正確な診断に基づいた治療が必要です。
咳でお悩みの方は、ぜひ一度、当院にご相談ください。丁寧な問診と検査で、あなたの咳の「本当の原因」を見つけ出し、最適な治療をご提案いたします。

