階段で息切れするのは「年のせい」?COPD(肺気腫)の初期症状とセルフチェック【神戸の専門医が解説】

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2025,12,19

コラム

階段で息切れするのは「年のせい」?COPD(肺気腫)の初期症状とセルフチェック【神戸の専門医が解説】

駅の階段を上りきった時、あるいは坂道を歩いている時、同年代の人よりも激しく息切れをしていませんか?

「最近、運動不足だからなあ」「もう歳だから仕方ない」 そう自分に言い聞かせて、休憩すれば治まるからと放置している方は非常に多いです。

しかし、その息切れは単なる加齢現象ではなく、「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」という肺の病気のサインかもしれません。

COPDは、かつて「肺気腫」や「慢性気管支炎」と呼ばれていた病気の総称で、「タバコ病」とも呼ばれることもあります。

神戸元町で呼吸器内科・アレルギークリニックを運営する医師として、今回は見逃されやすいCOPDの初期症状や、自分でできるチェック方法、そして治療の重要性について解説します。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)とはどんな病気?

COPDの最大原因は「タバコ」です。患者さんの90%以上に喫煙歴があります。

タバコの煙に含まれる有害物質を長期間吸い込み続けることで、肺の中で酸素と二酸化炭素の交換を行っている「肺胞(はいほう)」という小さな袋が破壊されたり、気道に炎症が起きて狭くなったりします。

一度壊れてしまった肺胞は、残念ながら元に戻ることはありません。

肺がスカスカの状態になり、空気を吸うことはできても、うまく吐き出せなくなるのが特徴です。

「昔吸っていたけど、もう止めたから大丈夫」と思っている方も油断は禁物です。

タバコのダメージは肺に蓄積されているため、禁煙してから数年〜数十年後に発症することも珍しくありません。

40歳以上の喫煙者は要注意!COPDセルフチェック

COPDは「ありふれた病気」でありながら、診断を受けていない「隠れCOPD」の人が非常に多いと言われています。

初期段階では症状が軽いため、風邪や老化と勘違いされやすいのです。

以下のチェックリストで、肺の状態を確認してみましょう。

【COPDセルフチェックリスト】

  • 40歳以上である

  • タバコを吸っている、または過去に吸っていた

  • 同年代の人と一緒に歩くと、自分だけ遅れてしまう

  • 階段や坂道で息切れがする

  • 1日に何度も咳が出る

  • 粘り気のある痰(たん)がよく出る

  • 風邪を引くと、咳や痰が長引く

  • 呼吸をすると「ゼーゼー、ヒューヒュー」と音がすることがある

もし3つ以上当てはまる場合、特に「息切れ」と「喫煙歴」がある場合は、COPDの疑いが濃厚です。呼吸器内科での検査をお勧めします。

「息切れ」を放置するとどうなる?

「歩くのが少ししんどいだけ」と治療せずに放置すると、COPDはゆっくりと、しかし確実に進行していきます。

初期は激しい運動をした時だけの息切れですが、進行すると平地を歩くだけで苦しくなり、さらに悪化すると、着替えや入浴といった日常動作でも息が上がるようになります。

最終的には、常に酸素吸入が必要な生活(在宅酸素療法:HOT)を余儀なくされ、行動範囲が極端に狭まってしまいます。

また、COPDは肺だけの病気ではありません。肺の炎症が全身に波及し、心筋梗塞や脳卒中、糖尿病、骨粗鬆症、うつ病などのリスクを高めることも分かっています。

「たかが息切れ」と侮ることは、健康寿命を縮めることにつながるのです。

治療で「壊れた肺」は元に戻るのか?

非常に残念ながら、現代の医学では一度壊れた肺胞を完全に元通りに再生させることはできません。

しかし、「早期に治療を始めれば、病気の進行を食い止め、健康な人と変わらない生活を送る」ことは十分に可能です。

治療の基本は「禁煙」と「吸入薬」

まずは何よりも「禁煙」です。これ以上肺を壊さないための絶対条件です。

その上で、狭くなった気道を広げる「気管支拡張薬」などの吸入薬を使用します。

最近の吸入薬は非常に進化しており、1日1回吸うだけで呼吸が楽になり、活動的に動けるようになる患者さんがたくさんいらっしゃいます。

自分でできる呼吸リハビリ「口すぼめ呼吸」

薬物療法と併せて行いたいのが呼吸リハビリです。代表的なのが「口すぼめ呼吸」です。

  1. 鼻から2秒かけて息を吸う。

  2. 口を「ウ」の形(口笛を吹く形)にすぼめる。

  3. すぼめた口から、4〜6秒かけてゆっくりと息を吐き切る。

息を吐く時に気道の内側から圧力をかけることで、気道が潰れるのを防ぎ、効率よく空気を出し入れできるようになります。

息苦しい時にぜひ試してみてください。

神戸・元町で息切れ外来をお探しの方へ

COPDの診断には、「呼吸機能検査」が必須です。

息を思い切り吸ったり吐いたりして肺活量を測定します。痛みはなく、短時間で終わる検査です。

当院は神戸元町エリアで、COPDや喘息などの呼吸器疾患を専門的に診療しています。

「最近、体力が落ちた気がする」という理由での受診も歓迎です。

それがCOPDの早期発見につながれば、これほど嬉しいことはありません。

風邪ではないのに咳が続く、階段がつらいと感じたら、肺のメンテナンスだと思って一度ご相談にいらしてください。


よくある質問(FAQ)

Q. タバコを吸ったことがない人でもCOPDになりますか?

A. 稀ですが、受動喫煙や大気汚染、化学物質の吸入、喘息の持病などが原因で発症することがあります。ただし、9割以上は喫煙が原因です。

Q. どのような検査をしますか?

A. 問診、聴診に加え、スパイロメーターという機械を使った呼吸機能検査を行います。必要に応じて胸部レントゲンやCT検査を行い、肺気腫の有無や、肺がんなどの他の病気がないかを確認します。

Q. 治療はずっと続けなければいけませんか?

A. COPDは高血圧や糖尿病と同じ慢性疾患です。症状が良くなっても肺の状態が元に戻ったわけではないため、自己判断で薬を止めず、根気強く治療を続けることが、将来の悪化を防ぐ鍵となります。

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