なんだったのか、新型コロナウイルス②~コロナウイルスはどのように拡散するか~
2021年1月3日
よく、「コロナは空気感染するの?」と言われることがあります。
しかし、従来の風邪コロナも含めて、コロナウイルスは結核、麻疹、水痘のように空気感染は起こしません。
空気感染とは、発症して排菌状態にある患者が居る空間では、患者が息をするだけで他人に移りうるということです。
排菌状態にある結核患者を診療することは私達呼吸器内科医は多々ありますが、その場合はN95マスクを使用して曝露しないようにします。
COVID19診療を行う際にもN95マスクは使用しましたが、それは空気感染予防のためではなく、新型コロナウイルスが咳をしたり酸素を投与したりしたときに舞い上がり、エアロゾルとなったものを吸い込まないようにするのを防ぐためです。
よく「エアロゾル感染」という言葉が使われますが、医学用語としては正しくなく、そもそもエアロゾルとは、気体中に液体ないしは固体の微粒子が広がった状態を指していて、ほこりや花粉、霧などが含まれます。
微粒子の大きさは数nmから100μm程度まで様々です。エアロゾル感染というのは、このような空気中をただよう微粒子内に病原体が含まれていて、この微粒子を介して感染することを指しており、感染経路として「飛沫感染」と「空気感染」を包含している用語です。
この2つの感染経路は、名前は似ていますが、対策方法が大きく異なり、基本的には「飛沫感染」と「接触感染」によって他者に伝播する新型コロナウイルスは、COVID19が発症した患者が息をするだけでは他者に移しませんが、咳をしたり痰を吐いたりした時に出されたウイルスが飛び散り、飛び散ったウイルスを触った手を、口や目に持っていってしまうことで感染します。
飛沫を発生させないことが重要なのでマスクを着用することや咳エチケットは大切ですし、飛沫を浴びないように距離を取ることが必要ですし、なにかを触った後は手洗い・消毒が大切です。
病原体が付着した手で物を触ると、その物に病原体が広がります。手指衛生だけでなく環境を清潔に保つ必要もあるため、ドアノブやパソコンのキーボード、机などの清掃・消毒は有効です。
しかし、次亜塩素酸水を環境中に噴霧して部屋全体を消毒するという方法は除菌効果がないだけでなく、薬剤によって肺を痛めつけてしまう(薬剤性肺障害)恐れがあるので勧められません。消毒液はあくまでも、拭き取って掃除をする時に用いるようにしてください。
フェイスシールドを使用することについては様々な意見がなされていますが、フェイスシールドは他人に移さないようにするための物ではなく、移らないように身を守るためのものです。
病原体を持っている可能性の高い血液や飛沫に暴露するリスクがある医療従事者や、不特定多数の人と接する可能性のある職業に従事する場合は装着する意味がありますが、一般の社会生活を行う上では必ずしも必要ないでしょう。
重ね重ね言いますが、フェイスシールドは「マスクと併用して初めて意味がある」ので、フェイスシールド単体での利用は意味がありません。
マスクは、人に移さないようにする為に有効です。咳をする時もマスクを付けて、更に肘の内側やハンドタオルなどで口元を塞いでおけば、咳エチケットとして十分でしょう。
ただし、不織布マスクと、ポリウレタンマスクや布マスクを比較すると、不織布マスクの方が拡散防止力も防御力も高いことが分かっており、できれば不織布マスクを使用することをお勧めします。
今回は、コロナウイルスの拡散の仕方と、防御の仕方について説明しました。ぜひ参考にしてください。