週末に悪化しやすい?―「ソーシャル・アプニア」と睡眠時無呼吸の新常識
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、いびきや睡眠中の無呼吸によって日中の強い眠気や集中力低下を招き、放置すれば高血圧・心筋梗塞・脳卒中などの危険を高める病気です。
最新の大規模研究では、生活リズムが乱れがちな週末(金曜・土曜の夜)にOSAが悪化しやすいことが示され、研究者はこの現象を「ソーシャル・アプニア」と名付けました。
若年者や男性で影響が強く、寝だめや社会的時差ボケ、飲酒・喫煙、CPAPの装着中断といった行動が関与する可能性が指摘されています。
したがって、診断や治療評価を平日一晩だけに頼ると重症度を過小評価しうるため、必要に応じて週末を含む複数夜の評価が重要です。
どんな研究?
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2025年8月13日、米国呼吸器学会誌 American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine に掲載された研究(通称“Social Apnea”)が、平日と週末でOSAの重症度が変わる点に注目しました。
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2020〜2023年にかけて、マットレスの下に設置する在宅センサーで多数例を継続測定し、週末はAHIが上がりやすいことを示しました。飲酒・就寝時刻の乱れ(寝だめ、社会的時差ボケ)が背景にある可能性が指摘されています。
なぜCPAPを使用することが大事なのか?
OSAは放置すると、高血圧・心筋梗塞・脳卒中など心血管リスクを高めます。
週末の飲酒・喫煙の増加、夜ふかしと寝だめ、CPAPを外してしまうなどの行動が、気道を狭くしたり、REM睡眠の増加を通じて無呼吸を起こしやすくするためと考えられています。The Guardian
診断や治療の判断を平日一晩の検査だけに頼ると、週末の悪化を見落とし、重症度を過小評価してしまう可能性があります。
当院の診療でどう活かす?
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検査の組み方
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平日一晩のPSG/簡易検査のみで判断せず、必要に応じて週末を含めた複数夜の評価を検討します(特に境界例:AHIが治療適応ライン近辺の方)。
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CPAPの使い方
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すでにCPAP治療中の方は、週末こそ外さないことが重要です。飲酒や夜ふかしで悪化しやすいため、週末の装着率と装着時間を意識しましょう。
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生活リズムの整え方(行動アドバイス)
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寝だめは±30分以内に:週末も起床・就寝時刻のズレをできるだけ小さく。
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飲酒は控えめに、就寝3–4時間前で切り上げ。
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喫煙は控える/禁煙外来を活用する。
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夜更かしの動画・ゲームは控え目にし、寝室環境を一定に。
(睡眠の不規則さは健康アウトカムを悪化させる可能性があり、整えることが重要です。)
どんな時に病院を受診したらいいの?
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いびきが大きい/息が止まると言われる/日中に強い眠気がある
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高血圧・糖尿病・不整脈など心血管リスクを持つ
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週末に特に眠い、頭が重いなどの自覚が強い
→このような症状をお持ちの方は 一度、当院のいびき治療外来でご相談ください。検査のタイミングや内容(週末を含めるか等)を個別にご提案します。
参考・出典
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Pinilla L, Lechat B, Scott H, et al. “Social Apnea”: Obstructive Sleep Apnea is Exacerbated on Weekends. Am J Respir Crit Care Med. Online ahead of print, Aug 13, 2025. doi:10.1164/rccm.202505-1184RL. (PubMed).
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Edouard P, Campo D, Bartet P, et al. Validation of the Withings Sleep Analyzer, an under-the-mattress device for detection of moderate–severe sleep apnea syndrome. J Clin Sleep Med. 2021;17(6):1217–1227. (PMCID: PMC8314651).
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FDA 510(k) summary for Withings Sleep Analyzer/Sleep Rx(性能表・感度特異度の概要). Sep 6, 2024.
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Scott H, et al. Frequent irregular sleep and health outcomes. Sleep Health. 2024.