慢性的な息切れとそのリスク
慢性的な息切れは、階段の昇り降りや少しの運動で呼吸が苦しくなる状態で、心不全やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などの重大な病気が隠れていることがあります。
これを放置すると、日常生活の活動量が落ちるだけでなく、病状が悪化して命に関わる危険性もあります。
そのため、聴診やレントゲン、呼吸機能検査などで原因を突き止めることが治療の第一歩です。
今回、この「息切れの原因がわかるまでの期間」が、その後の患者さんの入院リスクや寿命にどう影響するかを調べた重要な研究結果が発表されました。
この研究は、英国の研究グループによって行われ、詳細は2025年11月24日付の『Thorax』に掲載されています。
英国のデータを用いた大規模調査
研究チームは、英国の診療データベースを利用し、過去に心臓や肺の病気がなかったにもかかわらず、初めて「息切れ」という症状がカルテに記録された成人約10万人を対象に調査を行いました。
具体的には、その後5年ほどの間に息切れの原因となる病名の診断がついた人とつかなかった人を比較し、さらに「診断がつくまでの待ち時間」が、その後の2年間における予定外の入院や死亡のリスクとどのように関連しているかを分析しました。
診断の有無と遅れによる影響
調査の結果、息切れの原因となる診断がついたグループは、診断がつかなかったグループに比べて、その後の予定外入院や死亡のリスクが高いことがわかりました(これは診断がついた人には実際に治療が必要な病気が存在したことを示唆します)。
さらに重要な点として、病気の診断がついた人の中で分析を行うと、最初の息切れから診断までに6カ月以上かかった場合、死亡リスクが増加していました。
特に、診断まで2年以上(24カ月以上)かかってしまったケースでは、リスクが極めて高くなる(統計上の数値で約13倍)というデータが示されました。
早期発見が予後を分ける鍵
この結果は、息切れがあっても深刻な病気ではない(診断がつかない)ケースがある一方で、背景に病気がある場合は「半年以内の早期診断」がその後の経過を大きく左右することを意味しています。
つまり、息切れの原因が何であるかをできるだけ早く突き止め、治療が必要なグループとそうでないグループを早期に見極めることが、将来の健康を守るために非常に重要であると言えます。
暮らしへのヒント:息切れを感じたら
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「年のせい」と自己判断しない
加齢や運動不足と思い込まず、普段と違う息苦しさを感じたら、体が発しているサインと捉えてください。 -
半年以内の原因特定を目指す
症状が続く場合は放置せず、早めに医療機関を受診し、検査を受けることで診断の遅れを防ぎましょう。 -
症状のメモを持参する
「いつから」「どんな時に」「どのくらい」苦しいかを医師に伝えると、スムーズな診断の助けになります。 -
生活習慣を見直して予防する
喫煙は肺や心臓への大きな負担となります。禁煙や無理のない範囲での運動は、息切れの予防や改善に役立ちます。
まとめと受診のすすめ
結論として、慢性的な息切れの原因診断が遅れること、特に6カ月以上待機することは、生存率の低下と強く関連していることが明らかになりました。
すべての息切れが怖い病気とは限りませんが、リスクの高い病気を見逃さないためには早期の対応が鍵となります。
少しでも呼吸に違和感がある場合は、当院やかかりつけ医に相談し、適切な検査を受けることをお勧めします。
【引用】

