こんにちは。神戸元町呼吸器内科アレルギークリニックです。
寒さが厳しい季節ですが、少しずつ春の足音が聞こえてくる時期となりました。しかし、アレルギーをお持ちの方にとっては、「あの辛い季節」が近づいてくる合図でもあります。
「毎年、鼻水や目のかゆみで仕事や勉強に集中できない」
「薬を飲んでも、ピーク時は症状が抑えきれない」
「鼻詰まりで夜も眠れず、春先は体調が優れない」
もし皆さんがそのようなお悩みをお持ちであれば、今年こそ「初期療法」を取り入れてみませんか?
花粉症治療は、「症状が出てから」ではなく「症状が出る前(あるいは出始め)」に開始することが、シーズンのQOL(生活の質)を維持するために極めて重要です。
今回は、当院が推奨している「点鼻ステロイド薬を用いた初期療法」について、なぜそれほど効果的なのか、神戸エリアの飛散傾向と合わせて詳しく解説します。
1. 今年の花粉傾向と神戸エリアの対策時期
まず、敵を知ることから始めましょう。花粉症の主な原因となる「スギ」と「ヒノキ」です。
神戸では「2月初旬」が防衛ライン
地域によって飛散開始時期は異なりますが、私たち神戸エリアにおいては、例年「2月初旬」頃からスギ花粉の飛散が本格化します。
(※その年の気候により前後するため、最新の予報もご確認ください)
多くの方は、ニュースで「花粉飛散開始」と聞いてから、あるいは実際にくしゃみが出てから病院へ足を運ばれます。しかし、アレルギー専門医の視点から申し上げますと、それでは「一歩遅い」と言わざるを得ません。
なぜ「飛散前」なのか?
花粉症治療のガイドラインでも推奨されている「初期療法」は、花粉が飛び始める約1〜2週間前、もしくは「少しムズムズするかな?」と感じた瞬間から開始するのが鉄則です。
神戸にお住まいの方であれば、遅くとも2月上旬〜中旬までには受診し、治療体制を整えておくことを強くおすすめします。
2. なぜ「点鼻ステロイド」が第一選択なのか?
当院では、花粉症の初期療法として、飲み薬だけでなく「点鼻ステロイド薬(鼻噴霧用ステロイド薬)」の先行使用を推奨しています。
「ステロイド」と聞くと、「副作用が怖い」「強い薬なのでは?」と不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、現在の花粉症治療において、点鼻ステロイドは世界標準(ゴールドスタンダード)の治療法であり、むしろ飲み薬よりも優先されるべきケースが多いのです。その理由を紐解いていきましょう。
理由①:患部に直接届き、全身への副作用が少ない
点鼻薬は、炎症が起きている「鼻の粘膜」に直接作用します。飲み薬のように全身の血流に乗って運ばれるわけではないため、眠気やだるさといった全身性の副作用が極めて少ないのが特徴です。また、近年の点鼻薬は体内に吸収されにくい設計になっており、長期間の使用でも安全性が高いことがわかっています。
理由②:「鼻粘膜の地盤」を整える
ここが最も重要なポイントです。
花粉症の症状(くしゃみ、鼻水、鼻閉)は、鼻の粘膜でアレルギー反応が起こり、炎症物質が放出されることで発生します。
点鼻ステロイド薬には、強力な「抗炎症作用」があります。 これは単に鼻水を止めるだけでなく、「アレルギー反応を起こす現場(粘膜)の腫れや赤みを鎮め、過敏性を抑える」という、根本的な対抗処置にあたります。
3. 「自覚症状がなくても鼻粘膜は正常ではない」という事実
多くの方が誤解されている点があります。
それは、「症状がない=鼻の中は健康(正常)である」とは限らないということです。
「無症状の炎症」が始まっている
実は、皆様が「まだ大丈夫」と思っている時期でも、微量の花粉はすでに飛んでいます。
自覚症状としては現れていなくても、顕微鏡レベルで見れば、鼻の粘膜上ではすでにアレルギー反応の火種がくすぶっており、粘膜は正常な状態ではなくなっています。
「プライミング効果」とは
アレルギーの世界には「プライミング効果(抗原刺激による反応性の亢進)」という現象があります。
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シーズン初期、微量の花粉を繰り返し吸い込む。
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鼻の粘膜がダメージを受け、徐々に「過敏」になっていく。
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粘膜の堤防が決壊寸前になる。
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その状態で本格的な飛散期(大量の花粉)が到来する。
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堤防が一気に決壊し、爆発的な重症化を引き起こす。
これが、シーズン途中から急激に症状が悪化するメカニズムです。
初期療法で点鼻ステロイドを使用するのは、この「粘膜が過敏になるプロセス」を未然に防ぎ、堤防を補強しておくためなのです。
「炎症が強くなってから」では、薬の効果が出るまでに時間がかかります。
「炎症が起きる前(あるいは弱い段階)」に抑え込むことで、ピーク時の症状を劇的に軽くすることが可能になります。
4. 飲み薬(抗ヒスタミン薬)の役割と併用について
では、飲み薬は不要なのでしょうか? いいえ、そうではありません。
飲み薬の役割
抗ヒスタミン薬(飲み薬)は、アレルギー反応によって放出された「ヒスタミン」という物質が神経を刺激するのをブロックする役割があります。
つまり、「くしゃみや鼻水が出そうになるスイッチ」が入るのを防ぐイメージです。
併用のすすめ
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点鼻ステロイド: 舞台となる「粘膜の腫れ・炎症」そのものを鎮める(守りの要)。
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抗ヒスタミン薬(飲み薬): すでに出てしまった症状や、突発的な刺激による症状を抑える(攻めの守り)。
現在、すでに通年性のアレルギー性鼻炎(ダニやハウスダストなど)の症状がある方や、鼻閉(鼻詰まり)感が強い方は、今の時点から飲み薬を毎日内服、もしくは頓用(症状がある時だけ飲む)で使用しつつ、点鼻薬をスタートするのがベストな選択肢です。
特に「鼻詰まり」は、一度悪化して粘膜がパンパンに腫れ上がってしまうと、飲み薬だけではなかなか解消しません。点鼻薬で腫れを引かせることが、鼻詰まり解消への近道です。
5.ステロイド注射はダメ!
ここからは非常に重要なお話です。 患者様の中には、「花粉症を一発で止める注射があると聞いた」「注射ですぐに楽になりたい」とご希望される方がいらっしゃいます。
しかし、当院では花粉症治療を目的としたステロイド筋肉注射は原則として行いません。
なぜ注射は行わないのか?
それは、副作用のリスクが利益を大きく上回る可能性があるからです。
「一発で効く」と言われる注射は、体内に長く留まるタイプの強力なステロイド剤です。
これはあたかも「ステロイドの塊(カタマリ)」を体に入れるようなもので、数週間から数ヶ月にわたり全身に作用し続けます。
その結果、以下のような全身性の重篤な副作用を引き起こすリスクがあります。
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免疫力の低下(感染症にかかりやすくなる)
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糖尿病の誘発・悪化
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胃潰瘍
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骨粗鬆症・骨折
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緑内障・白内障
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精神障害
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満月様顔貌(ムーンフェイス): 顔が丸く腫れ上がる
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中心性肥満・野牛肩(バッファローハンプ): 首の後ろや腹部に脂肪がつく
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皮膚の菲薄化・皮下出血
これらは「クッシング症候群」と呼ばれる病態の特徴でもあります。 日本アレルギー学会のガイドラインにおいても、花粉症に対する全身ステロイド注射は、副作用の危険性から「望ましくない」とされています。
当院では、患者様の長期的な健康を守るため、安全性の高い「局所(点鼻薬)」「抗ヒスタミン薬」での治療を推奨し、リスクの高い「全身投与(注射)」は安易に行わない方針をとっております。
6. 【漢方薬】「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」という選択肢
当院では、西洋薬だけでなく漢方薬の処方も積極的に行っています。特に花粉症の時期によく用いられるのが「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」です。
どんな症状に効くの?
小青竜湯は、「サラサラした水っぽい鼻水」や「くしゃみ」が止まらない方に特におすすめです。体を温め、体内に溜まった余分な水分(水毒)を排出させる働きがあり、鼻炎症状を緩和します。
メリットと併用
最大の特徴は、一般的なアレルギー薬に見られる「眠気」の副作用がほとんどない点です。
そのため、受験生の方や、仕事で車の運転をされる方、日中のパフォーマンスを落としたくない方に非常に適しています。
また、点鼻ステロイドや抗ヒスタミン薬と併用することも可能ですので、「薬で眠くなるのが嫌だ」「西洋薬だけでは症状がスッキリしない」という方は、ぜひ診察時にご相談ください。
7. 患者さんからのよくある質問(FAQ)
当院の診察室でよくいただくご質問をまとめました。
Q. 去年処方された点鼻薬が残っていますが、使ってもいいですか?
A. 開封後の点鼻薬は、細菌が繁殖している可能性があります。また、使用期限が切れている場合も多いです。効果が落ちているだけでなく衛生面でも推奨できませんので、新しいお薬を処方してもらいましょう。
Q. 症状が治まったらすぐにやめてもいいですか?
A. これもよくある失敗例です。雨の日の翌日など、花粉が大量に飛ぶ日は変動します。
症状が消えても「粘膜の過敏性」はすぐには戻りません。
自己判断で中止せず、医師の指示通りにシーズン終了まで(または指示された期間)継続することが、ぶり返しを防ぐコツです。
Q. 市販の点鼻薬と処方薬は何が違いますか?
A. 市販の点鼻薬の多くには「血管収縮剤」が含まれています。これは即効性があり鼻通りがすぐに良くなりますが、使いすぎると逆に粘膜が腫れ上がる「薬剤性鼻炎」を引き起こすリスクがあります。
一方、病院で処方する点鼻ステロイドは、即効性は市販薬に劣る場合がありますが、継続して使うことで体質そのものを改善するように炎症を抑え、薬剤性鼻炎のリスクも低いため、シーズンを通した管理に適しています。
8. 薬以外のセルフケアも忘れずに
初期療法は強力な武器ですが、それでも「花粉を体に入れない」努力は必要です。以下の基本対策も徹底しましょう。
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マスクの着用(インナーマスクも有効):
基本中の基本です。顔にフィットするものを選びましょう。マスクの内側にガーゼを当てる「インナーマスク」も、花粉の吸入量を減らすのに効果的です。
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メガネの着用:
目に入る花粉を減らすだけでなく、無意識に目をこすってしまうのを防ぐ物理的なバリアになります。
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帰宅時のルーティン:
玄関を開ける前に、コートや髪についた花粉を払い落としましょう。また、帰宅後はすぐに洗顔・うがいを行い、粘膜についた花粉を洗い流してください。
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服装選び:
ウールなどの毛羽立った素材は花粉が付着しやすいです。表面がツルツルした化学繊維(ポリエステルやナイロンなど)のアウターがおすすめです。
9. まとめ:今年は「先手必勝」で乗り切りましょう
花粉症治療は、マラソンのようなものです。
症状が出てから慌ててダッシュ(治療)するのではなく、スタートラインに立つ前からのウォーミングアップ(初期療法)が、完走(シーズン終了)までの負担を大きく左右します。
【ポイントの再確認】
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スギ・ヒノキ花粉症の初期療法は、飛散前の開始が重要。
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神戸エリアの方は「1月下旬〜2月上旬」の受診、遅くとも「2月中旬」の治療開始を目指しましょう。
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「点鼻ステロイド薬」は、鼻粘膜の炎症を根本から抑える最重要アイテム。
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自覚症状がなくても、鼻の粘膜はすでにダメージを受け始めています。
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飲み薬(抗ヒスタミン薬)との上手な併用については医師にご相談ください。
神戸元町呼吸器内科アレルギークリニックへご相談ください
当院では、患者様お一人おひとりの生活スタイル、症状の重さ、過去の治療歴に合わせて、最適な内服薬や点鼻薬を処方いたします。
「毎年、薬を飲んでいるけれど眠くて困る」
「点鼻薬の使い方がよくわからない」
「漢方薬など、他の選択肢も相談したい」
どのようなことでもお気軽にご相談ください。
呼吸器とアレルギーの専門クリニックとして、皆様が春の陽気を快適に楽しめるよう、全力でサポートさせていただきます。
混雑が予想される時期ですので、Web予約をご活用の上、お早めのご来院をお待ちしております。
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