こんにちは、神戸元町呼吸器内科・アレルギークリニックです。
最近は花粉症治療のため来院される患者さんがとても多くなっています。
花粉症は、体の免疫システムが花粉に過剰反応して引き起こされるアレルギー疾患です。
症状として鼻水、くしゃみ、目のかゆみなどが現れ、日常生活に大きな支障をきたします。放置すると仕事効率の低下や睡眠障害、うつ症状を引き起こし、特に子どもでは集中力低下による学業成績の悪化も報告されています。
治療には抗ヒスタミン薬や点鼻薬などの薬物療法や、花粉の多い時期のマスク着用などの予防策が必要です。
今回、お茶の摂取とスギ花粉アレルギーの関係について新たな論文が発表され、特に緑茶がスギ花粉特異的IgE抗体の陽性率を下げる可能性があることが示されました。
この研究は、順天堂大学医学部総合診療科の研究グループによって行われ、詳細は2025年2月付の「Journal of Nutritional Science」に掲載されています。
飲むお茶の種類によって体で作られる抗体の量が変わるらしい
この研究では、日本の東北地方に住む約16,000人を対象に、緑茶、番茶、ウーロン茶、紅茶の4種類のお茶の摂取頻度と杉花粉アレルギーの関係を調査しました。
参加者の血液検査でスギ花粉特異的IgE抗体レベルを測定し、自己申告による茶摂取頻度(週1回未満、週1~6回、1日1回以上)とその関連性を解析しました。
その結果、緑茶を1日1回以上飲む人は、週1回未満の人と比較して、スギ花粉に対するIgE抗体陽性のリスクが約19%低いことが判明しました(調整オッズ比=0.81)。
一方、他の種類のお茶では統計的に有意な関連は見られませんでした。
この研究から分かること
研究結果から、緑茶の摂取はスギ花粉アレルギーのマーカーである特異的IgE抗体の陽性率を下げる可能性があることが示されました。
この関連性は、年齢や性別、BMI、飲酒や喫煙習慣、運動頻度、睡眠時間、高血圧や糖尿病、脂質異常症の薬物使用などの要因を調整した後も維持されました。
さらに詳細な分析では、65歳未満の人々において、緑茶摂取とスギ花粉アレルギーの間により強い関連性が見られました。
特に、1日2~3杯や10杯以上の緑茶を摂取する人々では、より大きな効果が観察されました。
日常生活への応用
この研究から、日常生活における緑茶の摂取は、スギ花粉アレルギー対策として役立つ可能性があることが示唆されます。以下に、この研究から学べる実用的な知見をまとめます:
定期的な緑茶摂取を心がける – 研究結果によれば、1日1回以上緑茶を飲むことで花粉症のリスクが低下する可能性があります。日常的な飲み物として緑茶を取り入れることを検討してみましょう。
若年層での効果に注目 – 特に65歳未満の人々において、緑茶摂取とアレルギー抑制効果の関連がより顕著でした。若い世代の花粉症対策として有効かもしれません。
適量を意識する – 研究では1日2~3杯、あるいは10杯以上の緑茶摂取でより大きな効果が見られました。ただし、カフェインの摂りすぎには注意が必要です。
他の花粉症対策と併用する – 緑茶の摂取は補助的な対策として、医師の処方する治療薬や予防策と併せて取り入れることをお勧めします。
茶カテキンの抗アレルギー作用に着目 – 緑茶に含まれるカテキンには抗酸化作用があり、ヒスタミンの放出を抑制することでアレルギー症状を緩和する可能性があります。
まとめ
この研究は、日本の主要な季節性アレルギーであるスギ花粉症に対して、緑茶摂取が予防的効果を持つ可能性を示唆しています。
緑茶を日常的に摂取することで、スギ花粉特異的IgE抗体の陽性率が低下し、花粉症のリスク減少につながる可能性があります。
毎日のお茶習慣が、花粉症の季節を少しでも快適に過ごす助けになるかもしれません。