花粉症の時期はいびきが悪化する?「鼻づまり」と睡眠時無呼吸の密接な関係

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2025,12,08

コラム

花粉症の時期はいびきが悪化する?「鼻づまり」と睡眠時無呼吸の密接な関係

「春になると、夫のいびきがひどくなる気がする」 「花粉症の時期は、寝ても疲れが取れず、昼間ずっと眠い」

毎年、スギやヒノキの花粉が飛ぶシーズンになると、このような悩みを持つ患者さんが急増します。 実は、その感覚は間違いではありません。

「鼻づまり(アレルギー性鼻炎)」と「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」は、切っても切れない密接な関係にあります。 普段はいびきをかかない人がこの時期だけ「隠れSAS」になったり、治療中の方がCPAPをつけられなくなってしまったりすることも少なくありません。

今回は、神戸元町呼吸器内科・アレルギー科クリニックが、花粉症シーズンの睡眠リスクと、鼻呼吸を取り戻す重要性について解説します。


1. 鼻がつまると、なぜ「いびき」が出るのか?

私たちの体は本来、「鼻呼吸」で眠るようにできています。 鼻は優秀なフィルターであり、加湿器でもあります。しかし、アレルギー炎症によって鼻の粘膜が腫れ上がり、通り道が塞がってしまうと、呼吸をするために無意識に口を開けてしまいます。

これが諸悪の根源、「口呼吸」の始まりです。

口呼吸が気道を狭くするメカニズム

口を開けて寝ると、下あごが重力で下がります。すると連動して「舌」が喉の奥へと落ち込みます(舌根沈下)。 ただでさえ鼻が詰まって苦しいのに、喉の空気の通り道(気道)まで狭くなってしまうのです。

狭くなった気道を空気が無理やり通ろうとするため、粘膜が激しく振動して「ガーッ!」という爆音のいびきが発生します。そして、気道が完全に塞がれば「無呼吸」になります。

つまり、花粉症による鼻づまりは、物理的に「睡眠時無呼吸症候群」を作り出すスイッチになってしまうのです。


2. 負の連鎖!「季節性SAS」の恐怖

「たかが数ヶ月のことだから」と我慢するのはお勧めできません。 睡眠の質が悪化することは、アレルギー症状そのものを悪化させる「負のスパイラル」を招くからです。

  1. 【花粉症】で鼻がつまり、口呼吸になる。

  2. 【いびき・無呼吸】が発生し、睡眠の質が低下する。

  3. 睡眠不足により【自律神経】が乱れ、免疫バランスが崩れる。

  4. 粘膜が過敏になり、【花粉症の症状】がさらに悪化する。

また、口呼吸で寝ると、乾燥した冷たい空気が直接のどや肺に入り込みます。これにより、のどの炎症や風邪を引きやすくなり、さらに体調を崩す原因となります。


3. CPAPユーザーにとっての「試練の春」

すでに睡眠時無呼吸症候群と診断され、CPAP(シーパップ)治療を行っている方にとっても、花粉症シーズンは鬼門です。

「鼻が詰まっていて、CPAPの風が入ってこない」 「口を開けてしまうので、空気が口から漏れて不快」 「苦しくて、夜中に無意識にマスクを外してしまう」

このような理由で、自己判断でCPAPを中断してしまう方がいらっしゃいます。 しかし、鼻が詰まっている時こそ、無呼吸のリスクは高まっています。

この時期に治療を中断するのは、心臓や脳への負担を考えると非常に危険です。


4. 「アレルギー科」だからできる解決策

「いびき」も「花粉症」も、同時に解決する必要があります。 当院は呼吸器内科であると同時に、アレルギー科の専門医師でもあります。以下のようなアプローチで、快適な睡眠を守ります。

① 点鼻薬・内服薬の適切なコントロール

「眠くなるのが怖いから薬を飲みたくない」という方もご安心ください。最近は眠気が出にくいアレルギー薬が多くあります。また、即効性のある点鼻薬(噴霧ステロイド薬)を併用することで、鼻の通りを劇的に改善させます。

② 舌下免疫療法(根本治療)

スギ花粉症やダニアレルギーに対しては、体をアレルゲンに慣れさせる「舌下免疫療法(シダキュアなど)」も行っています。来シーズンに向けて、アレルギー体質そのものを改善したい方にお勧めです。

③ CPAPの設定調整

CPAPをお使いの方には、鼻づまりの時期だけ「加湿機能」を強化したり、空気圧の調整を行ったり、場合によっては口まで覆うタイプのマスク(フルフェイスマスク)へ一時的に変更するなどの対策を提案します。


まとめ:鼻を通せば、眠りが変わる

春先の強烈な眠気やだるさ。 それは「春の陽気」のせいでも、「花粉症の薬の副作用」のせいでもなく、「鼻づまりによる睡眠時無呼吸」が原因かもしれません。

「鼻を通すこと」は、単にクシャミを止めるだけでなく、あなたの命と健康を守る「良質な睡眠」を確保することと同義です。

神戸元町呼吸器内科・アレルギー科クリニックでは、呼吸とアレルギーの両面から、あなたの辛いシーズンをサポートします。 「鼻さえ通れば眠れるのに」とお悩みの方は、ぜひお早めにご相談ください。


参考文献

・日本アレルギー学会「鼻アレルギー診療ガイドライン」 ・日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」

・Leger D, et al. Allergic rhinitis and its consequences on quality of sleep: An unexplored area. Arch Intern Med. 2006.(アレルギー性鼻炎が睡眠の質に与える影響)

・Young T, et al. Nasal obstruction as a risk factor for sleep-disordered breathing. J Allergy Clin Immunol. 1997.(鼻閉と睡眠呼吸障害のリスクに関する研究)

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神戸元町呼吸器内科・アレルギークリニック

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