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2025,02,05

コラム

【コラム】日中の眠気が認知症リスクを高める可能性

こんにちは、神戸元町呼吸器内科・アレルギークリニックです。

いびきの症状で受診される方が、沢山おられますが、なぜいびきの治療を行わないといけないの?という疑問に答えるのは難しいことです。

寝ている時に舌が落ち込んでしまって、いびきをかくだけではなく、呼吸が止まってしまう「睡眠時無呼吸症候群」は、色々な臓器に酸素が行き届かなくなるため脳卒中や心筋梗塞のリスクが上がり、寿命が10年短くなってしまう病気です。

寿命だけでなく、認知症との関係についてもこれまでも指摘されていましたが、高齢者の日中の過度な眠気や活動への熱意の低下を来すことで認知症の前段階(運動認知リスク症候群・MCR)に関連する可能性が、新たな研究で示されました。

MCRは、主観的な認知機能の低下と歩行速度の低下が同時に見られる状態を指し、この状態に該当するリスクが3倍以上になることが明らかになりました。

この研究は、米アルバート・アインシュタイン医科大学の研究グループによって行われ、詳細は2024年11月6日付の「Neurology」に掲載されています。

研究の概要

研究チームは、認知症を持たない65歳以上の高齢者445人(平均年齢75.9歳、女性56.9%)を対象に、睡眠の質とMCRの関連を調査しました。

  • MCRの評価: 質問票で聴取した主観的な認知機能の低下の報告と、電子トレッドミルで測定された歩行速度の低下を基に判断。
  • 睡眠の質の評価: ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を使用。5点以下を「良い睡眠の質」、5点超を「悪い睡眠の質」と分類。
  • 追跡期間: 中央値2.9年間

主な結果

  • 試験開始時点ではMCRが認められなかった403人のうち、追跡期間中に36人がMCRと判定。
  • 睡眠の質の影響:
    • 悪い睡眠の質を持つ人は、良い睡眠の質を持つ人に比べてMCRリスクが2.7倍高かった。
    • しかし、抑うつ症状を調整すると、この関連は有意ではなくなった。
  • 日中の機能障害:
    • PSQIの要素の中で、「過度な眠気や熱意の低下」がMCRリスクと有意に関連していることがわかった。

この研究からわかること

今回の研究結果が因果関係を完全に証明するものではないとしながらも、日中の眠気や活動意欲の低下がMCRリスクに強く関連することを指摘しています。

睡眠障害がどのようにして認知機能低下に結び付くのかは解明されていませんが、睡眠障害を治療することで、認知機能低下を予防できる可能性があります。

日常生活への応用

この研究は、良質な睡眠が脳の健康を守る上で重要であることを示しています。高齢者自身やその家族は、次のような取り組みをすると良いでしょう。

  1. 睡眠の質の評価: 日常的に睡眠の質をモニタリングし、問題があれば専門家に相談する。
  2. 日中の活動管理: 適度な運動や日光浴を取り入れることで、日中の眠気を軽減し、睡眠の質を改善する。
  3. 早期のスクリーニングと治療: 睡眠障害が認められる場合、早期に治療を開始し、脳の健康を守るための対策を講じる。
  4. 生活習慣の見直し: 睡眠環境を整え、夜間の質の高い睡眠を確保する。

まとめ

日中の過度な眠気や活動意欲の低下は、高齢者の脳の健康に深刻な影響を与える可能性があります。

睡眠の質を改善することが老後の認知機能低下予防に重要です。

良質な睡眠を目指し、早期から適切な対策を講じることで、健康的な老後を送るための基盤を築きましょう。

【引用】

Neurology. 2024 Dec 10;103(11);e210054. pii: e210054.
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