長引く不調「コロナ後遺症」と喫煙の意外な関係
新型コロナウイルス感染症の後遺症（Long COVID）は、感染から時間が経過しても倦怠感や息苦しさ、味覚・嗅覚の異常などが続く状態で、日常生活に大きな支障を及ぼすことがあります。
明確な治療法はまだ確立されておらず、対症療法が中心となるため、予防とリスク管理が重要です。
全国2.8万人を調査：タバコの種類別にリスクを分析
今回の研究は、これまで十分に解明されていなかった「タバコの種類（紙巻き・加熱式・その併用）」によって、後遺症のリスクや症状にどのような違いがあるのかを明らかにしたものです。
この研究は、大阪公立大学の研究グループによって行われ、詳細は2025年11月14日付の『Scientific Reports』に掲載されています。
紙巻き・加熱式の「併用」で症状リスクが最大に
この研究は、全国規模のインターネット調査（JASTIS 2023）に参加した2万8,250人（うち新型コロナ感染経験者5,068人）を対象に行われました。
研究チームは、参加者を「タバコを吸わない人」「紙巻きタバコのみ使用」「加熱式タバコのみ使用」「両方を併用」の4つのグループに分類し、それぞれの喫煙習慣と後遺症（関節痛、呼吸困難、味覚・嗅覚障害など）との関連性を統計学的に詳しく分析しました。
「加熱式なら安心」は誤解？ 併用による悪化の可能性
解析の結果、タバコを吸っている人は吸わない人に比べて、後遺症のリスクが高い傾向にあることが分かりました。
特に注目すべきは、紙巻きタバコと加熱式タバコの両方を使っている「併用グループ」で、関節痛や呼吸困難など5つの症状と関連が見られ、最もリスクが高い結果となりました。
次いで紙巻きのみのグループでは3症状、加熱式のみでも2症状（呼吸困難や性機能障害）との関連が確認されており、タバコの種類を問わず影響があることが示されました。
感染後の健康を守るための5つのポイント
この結果から、喫煙は新型コロナ後遺症のリスクを高める要因であり、特に「紙巻きと加熱式の併用」は症状をより多様化・悪化させる可能性が高いと言えます。
●禁煙に取り組む
タバコは感染時の重症化だけでなく、長引く後遺症のリスクも高める可能性があるため、禁煙は健康を守る有効な手段です。
●「加熱式なら安心」と思わない
今回の研究で、加熱式タバコ単独の使用でも呼吸困難などのリスクとの関連が示されたため、紙巻きと同様に注意が必要です。
●「併用」は避ける
紙巻きと加熱式の両方を使うことは、相乗的にリスクを高める可能性があるため、減煙目的等での安易な併用は控えましょう。
●気になる症状は医師に相談
息苦しさや体調不良が続く場合は、自己判断せず、呼吸器内科やかかりつけ医、後遺症外来などに相談してください。
●生活習慣全体を見直す
喫煙以外の要因も考慮し、バランスの取れた食事や十分な睡眠を心がけ、身体の回復力を高める生活を送りましょう。
禁煙が回復への近道：不安な場合は専門家に相談を
本研究により、喫煙習慣、特にタバコの種類の違いや併用が新型コロナ後遺症と密接に関連していることが初めて示唆されました。
加熱式タバコの普及が進む日本において、この結果は禁煙支援の重要性を強く裏付けるものであり、少しでも不安がある方は専門家への相談をお勧めします。
【引用】 Toyokura Erika, Yamada Kazuhiro, Asai Kazuhisa, et al. Dual use of combustible and heated tobacco products associates persistent symptoms with a history of COVID-19: a JASTIS 2023 cross‑sectional study. Scientific Reports, 2025, 15, 1, p.（オンライン掲載）. (Scientific Reports).
