喫煙が奪う時間と健康、そして禁煙による未来への希望
1本のタバコがあなたの寿命を最大22分縮める――そんな衝撃的な研究結果が、英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究チームから報告されました。
この数字を聞くと、喫煙が私たちの体に及ぼす深刻な影響を改めて実感します。
喫煙の影響は累積してゆき、1日1箱(20本)のタバコを吸うと、1日あたり約7時間の寿命を失う可能性があると推測されるようです。
過去の研究と新たな知見
以前の研究では、タバコ1本で寿命が11分短縮するとされていましたが、最新のデータを基にした分析では、男女全体の平均で20分、男性で17分、女性で22分に上昇しています。
この差は、喫煙行動や代謝の違いによるものと考えられています。
さらに、喫煙による寿命の短縮だけでなく、健康な中年期が失われることも指摘されています。
例えば、60歳の喫煙者の健康状態は、非喫煙者の70歳と同等である可能性があるとされています。
禁煙がもたらす寿命の回復
しかし、禁煙はいつから始めてもメリットがあるようです。
「禁煙するのが遅すぎる」ということはないのです。
20代や30代前半で禁煙した場合、平均寿命は喫煙経験のない人とほぼ同等に近付くとされています。
さらに、禁煙を始めたその日から寿命が少しずつ取り戻されることが、具体的な日数で示されています。
例えば、1日10本吸う喫煙者が1月1日に禁煙を始めると、以下のような寿命回復が期待できます:
- 1月8日:1日分の寿命を回復
- 2月20日:1週間分の寿命を回復
- 8月5日:1カ月分の寿命を回復
- 年末まで:50日分の寿命を回復
喫煙がもたらす健康リスクと免疫への影響
喫煙は、がんや心疾患、呼吸器疾患など多くの健康問題の原因となるだけでなく、免疫系にも悪影響を与えます。
2024年に「Nature」誌に掲載された研究では、喫煙が免疫反応を弱め、感染症や自己免疫疾患、さらにはがんへの脆弱性を高めることが示されました。
一方で、禁煙することで免疫系が回復し始めるという明るい内容も報告されています。
フランスのパスツール研究所のDarragh Duffy氏は、「禁煙によるリセットが始まる。最適な禁煙のタイミングは今だ」と述べています。
禁煙は自分と未来への贈り物
喫煙率は徐々に減少していますが、それでもなお、喫煙は米国で予防可能な死因の第1位です。
毎年48万人以上の命が喫煙によって失われています。禁煙を始めることは、単に寿命を延ばすだけでなく、健康的で充実した時間を取り戻す行動です。
自分のため、家族や大切な人々のために、今から禁煙を始めてみませんか?
禁煙には努力が要りますが、医師や看護師の助けを借りることで成功率が大幅に向上します。
あなたの一歩が未来を変える――禁煙は、その第一歩なのです。
当院でも禁煙外来は行っておりますので、いつでもご相談ください。
【引用】
The price of a cigarette: 20 minutes of life?
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/add.16757
Sarah E Jackson et,al Addiction. 2024;1–3