「熱は下がったのに、咳だけがいつまでも残っている」「夜になると咳込んで眠れない」「インフルエンザは治ったはずなのに、階段で息が切れる」――。インフルエンザの流行期になると、外来ではこうしたご相談が増えてきます。
神戸市では、2026年第41週(10月5日〜11日)のインフルエンザの定点当たり報告数が14.03となり、注意報の基準である10を超えました。
昨シーズンより早いペースで流行が広がっており、これから数週間は「インフルエンザのあとに残る咳」に悩む方が増えると考えられます。
この記事では、インフルエンザのあとに咳が長引く理由、自然に治る咳と受診したほうがよい咳の見分け方、喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)をお持ちの方が流行期に気をつけたいことを、呼吸器内科の立場からわかりやすくお伝えします。
特に神戸市内・三宮・元町周辺にお勤めの方、お住まいの方の受診の参考になれば幸いです。
神戸のいまのインフルエンザ流行状況
兵庫県は2026年10月15日、県内のインフルエンザが今シーズン初めて注意報レベルに達したと発表しました。第41週の県全体の定点当たり報告数は10.15で、報道によると昨シーズンより約3週間早い到達です。患者さんの約3分の2は14歳以下のお子さんでした。
神戸市の同じ週の数字はさらに高く、定点当たり14.03(前週の1.27倍)でした。市内ではインフルエンザによる学級閉鎖の報告も増えています。一方、新型コロナウイルス感染症は定点当たり0.77で、いまのところ大きな流行にはなっていません。
お子さんが学校や保育園でかかり、ご家族に広がるケースも多い時期です。ご自身は軽く済んでも、そのあと咳だけが長く残ることがあります。
ウイルスがいなくなっても「気道の傷」は残る
インフルエンザウイルスは、のどから気管支にかけての気道の表面(粘膜)に感染します。熱が下がりウイルスがいなくなっても、傷ついた粘膜が元に戻るまでには時間がかかります。そのあいだ、気道はちょっとした刺激にも敏感になっています。
冷たい空気を吸ったとき、話したり笑ったりしたとき、横になったときなどに咳が出やすくなるのはこのためです。このように、かぜやインフルエンザなどの感染症のあとに残る咳を「感染後咳嗽(かんせんごがいそう)」と呼びます。
多くは自然に落ち着くが、時間はかかる
日本呼吸器学会の「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019」では、咳を続いている期間で次のように分けています。
| 咳が続いている期間 | 呼び方 | 主な考え方 |
|---|---|---|
| 3週間未満 | 急性咳嗽 | かぜ・インフルエンザなど感染症によるものが中心 |
| 3週間以上8週間未満 | 遷延性咳嗽 | 感染後の咳と、それ以外の病気が混ざってくる時期 |
| 8週間以上 | 慢性咳嗽 | 感染症以外の原因(咳喘息など)を詳しく調べる |
同ガイドラインでは、感染による咳はウイルスが原因のことが最も多く、自然に治まっていくのが特徴とされています。一方で、ウイルスが排除されたあとも後遺症状として咳が残るため、3〜8週間続く咳の原因として感染後咳嗽はよく見られます。
つまり「インフルエンザのあとの咳」の多くは、時間とともに少しずつ軽くなっていきます。ただし、なかには自然には治らない病気が隠れていることもあります。次の章で見分けるポイントをご紹介します。
「様子を見てよい咳」と「受診したほうがよい咳」の見分け方
様子を見てもよいことが多いケース
- 熱が下がり、全身のだるさは日ごとに良くなっている
- 咳の回数が、週単位で見ると少しずつ減ってきている
- 息苦しさや、ゼーゼー・ヒューヒューという音(喘鳴)はない
- 夜はおおむね眠れている
このような場合は、のどの乾燥を防ぎ、睡眠をしっかりとって、数日から1〜2週間ほど経過を見てもよいことが多いです。
早めに受診をおすすめするケース
- 咳が3週間以上続いている、または良くなるどころか悪くなっている
- 夜中や明け方に咳で目が覚める日が続く
- ゼーゼー・ヒューヒューという音がする、息苦しさがある
- 以前に喘息と言われたことがある、かぜのたびに咳が長引く
- たばこを吸っている(吸っていた)40歳以上で、階段や坂道で息切れがする
- 咳込んだあとに吐きそうになる、息を吸うときに「ヒュー」と音がする咳の発作がある
すぐに医療機関に相談すべき危険なサイン
次のような症状があるときは、咳が続いている期間にかかわらず、早めに医療機関に相談してください。
夜間・休日で判断に迷う場合は、救急相談窓口(#7119など)の利用も検討してください。
- 一度下がった熱が、ふたたび上がってきた
- 息が苦しい、横になると苦しくて座っていたい
- 唇や指先が紫色っぽい
- 胸の痛みがある、痰に血が混じる
- 水分がとれない、意識がぼんやりしている
厚生労働省も、高熱が続く・呼吸が苦しい・意識状態がおかしいなど具合が悪い場合は早めの受診を呼びかけています。インフルエンザでは、高齢の方や免疫力が低下している方で、細菌による肺炎を併発して重症になることがあります。
インフルエンザ後の長引く咳に隠れていることがある病気
咳喘息(せきぜんそく)
ゼーゼーという喘鳴や息苦しさはなく、咳だけが長く続くタイプの喘息です。夜から明け方にかけて悪くなりやすく、季節の変わり目に繰り返す傾向があります。インフルエンザやかぜをきっかけに初めて症状が出る方も少なくありません。
咳止めの市販薬が効きにくい一方で、気管支を広げる薬で咳が軽くなるのが特徴です。放置すると、ゼーゼーを伴う気管支喘息に移行することがあるため、早めの診断と治療が大切です。咳喘息については「長引く咳の正体「咳喘息」と気管支喘息の違い」で詳しく解説しています。
気管支喘息の悪化
すでに喘息をお持ちの方は、インフルエンザなどの呼吸器感染症をきっかけに症状が大きく悪化することがあります。環境再生保全機構も、かぜやインフルエンザ、肺炎などの呼吸器感染症は喘息を悪化させる大きな要因であり、乾燥しがちな冬は特に注意が必要としています。
「インフルエンザが治ったあとから、発作止めの吸入を使う回数が増えた」という方は、ふだんの治療の見直しが必要なサインです。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)の増悪
主に長年の喫煙が原因で、肺や気管支が少しずつ傷んでいく病気です。ふだんは「年のせい」と思われがちな息切れも、感染症をきっかけに急に悪化(増悪)することがあります。日本呼吸器学会の資料では、増悪の回数が多いほど生存率が低下すること、増悪のあとしばらくは心筋梗塞や脳卒中のリスクも高まることが示されています。
喫煙歴がある方で、インフルエンザのあとに息切れや痰が増えた場合は、一度呼吸機能を調べておくと安心です。COPDセルフチェックもご活用ください。
細菌による肺炎・気管支炎
インフルエンザで弱った気道に、細菌があとから感染することがあります。「いったん良くなったのに、また熱が出てきた」「黄色や緑色の痰が増えてきた」「息苦しさが強くなってきた」といった経過は、二次的な細菌感染を疑うサインです。抗菌薬(抗生物質)による治療が必要になることがあるため、自己判断で様子を見すぎないようにしましょう。
百日咳・マイコプラズマなど、別の感染症
インフルエンザと前後して、別の感染症にかかっていることもあります。百日咳は、短い咳が連続して止まらなくなり、そのあとに息を吸い込むときに「ヒュー」と音がする発作が特徴です。大人ではこうした典型的な症状がはっきりしないこともあり、長引く咳として受診されて見つかることがあります。
後鼻漏(こうびろう)・副鼻腔炎
鼻水がのどの奥に流れ込み、それが刺激になって咳が出るケースです。鼻づまりや、のどに何かが張り付いている感じを伴うことが多く、横になると咳が増えやすくなります。花粉症などのアレルギー性鼻炎をお持ちの方にもよく見られます。
ご自宅でできるセルフケア
- のどと気道を乾燥させない:神戸市は室内の湿度を50〜60%に保つことを勧めています。加湿器やマスクを活用しましょう。
- こまめな水分補給:痰を出しやすくし、のどの乾燥を防ぎます。
- たばこの煙を避ける:喫煙や受動喫煙は、敏感になった気道をさらに刺激します。禁煙を考えている方は禁煙外来もご相談ください。
- 冷たい空気を急に吸い込まない:朝晩の冷え込みが強くなる時期は、外出時にマスクやマフラーで口元を覆うと咳込みにくくなります。
- 手元に残っている抗菌薬を自己判断で飲まない:ウイルスによる咳には抗菌薬は効きません。必要かどうかは医師が判断します。
喘息のある方は解熱鎮痛薬に注意
成人の喘息の方の約5〜10%は、アスピリンなどの解熱鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬)で強い発作が起こることがあり、鼻ポリープや副鼻腔炎のある方は特に注意が必要とされています(いわゆるアスピリン喘息)。
インフルエンザで熱が出たときに市販の解熱剤を使う場合は、喘息があることを薬剤師や医師に必ず伝えてください。
喘息・COPDの方が、いま気をつけたいこと
インフルエンザが流行し始めた今の時期は、喘息やCOPDをお持ちの方にとって大切な準備期間です。
- ふだんの吸入薬を自己判断でやめない:症状が落ち着いていても、気道の炎症を抑える吸入薬は続けることが基本です。調子が良いときこそ、感染したときに悪化しにくい状態を保ちましょう。
- インフルエンザワクチンを検討する:日本呼吸器学会はCOPDの増悪予防としてインフルエンザや肺炎球菌のワクチン接種を推奨しています。ワクチンは感染を完全に防ぐものではありませんが、発病を一定程度抑え、重症化を防ぐ効果が期待されています。当院の接種案内は「2026年度インフルエンザワクチンのご案内」をご覧ください。
- 熱が出たら早めに相談する:抗インフルエンザ薬は、発症から48時間以内に使い始めると発熱期間が通常1〜2日短くなるとされています。持病のある方は、かかったときの対応をふだんからかかりつけ医と話し合っておくと安心です。
- 発作止めの使用回数を記録する:インフルエンザのあとに発作止めの吸入を使う回数が増えたら、悪化のサインです。記録を持って受診すると、治療の調整がスムーズになります。
当院(神戸元町呼吸器内科アレルギークリニック)でできること
当院はJR元町駅東口から徒歩1分、阪神元町駅東改札口から徒歩2分の場所にあり、三宮からもアクセスしやすい呼吸器内科・アレルギー科のクリニックです。平日は夜21時まで、土曜日も18時まで診療しているため、お仕事帰りにも受診いただけます(最新の診療時間は診療案内でご確認ください)。
長引く咳・喘息が疑われる場合
- 呼気NO検査:吐いた息に含まれる一酸化窒素の量を測り、気道にアレルギー性の炎症があるかを調べます。息を吹くだけの負担の少ない検査です。
- 呼吸機能検査:息を吸ったり吐いたりする力を測り、気管支が狭くなっていないか、COPDがないかを調べます。
- 血液検査:アレルギー体質かどうかの確認などに用います。
- 吸入治療と吸入指導:吸入薬は正しく使えてこそ効果が出ます。使い方を丁寧にご説明します。
費用の目安(3割負担の場合)は、咳・気管支喘息のページに掲載しています。初診はお薬代(2週間分)を含めて3,500〜4,000円程度、呼気NO検査は720円、呼吸機能検査は990円が加わります。18時以降・土日の受診では夜間・早朝等加算がかかります。
発熱がある場合
発熱がある方は、一般内科・発熱外来で対応しています。発熱外来の受診には予約が必要です。LINE公式アカウント、WEB予約、またはお電話でご予約ください(WEB問診の入力だけでは予約は確定しません)。インフルエンザの抗原検査は、その時の流行状況に合わせて実施しています。
よくあるご質問
Q. インフルエンザのあとの咳は、どのくらいで治りますか?
- 個人差がありますが、多くは数週間のうちに少しずつ軽くなっていきます。3週間以上続く場合や、だんだん悪化している場合は、感染後の咳以外の原因が隠れていないか調べることをおすすめします。
Q. 咳が残っていますが、人にうつしますか?
- 熱が下がって一定期間がたっていれば、咳が残っていてもインフルエンザをうつす可能性は低くなっていきます。ただし、咳が出ている間は周りの方への配慮としてマスクの着用をおすすめします。別の感染症(百日咳など)が隠れている場合もあるため、長引くときは受診してください。
Q. 市販の咳止めを飲んでもよいですか?
- 一時的に使うことは可能ですが、咳喘息や喘息による咳には効きにくいことが知られています。市販薬で良くならない咳が続く場合は、原因を調べて原因に合った治療を受けることが近道です。喘息のある方は、解熱鎮痛薬の成分にも注意が必要です。
Q. 呼吸器内科と一般の内科、どちらを受診すればよいですか?
- 熱や全身のだるさが強い時期は、一般内科・発熱外来で構いませんが、最初から当院を受診していただくことは全く問題ありません。熱が下がったあとも咳が3週間以上続く、夜間に咳込む、息苦しさや喘鳴がある、喘息やCOPDと言われたことがある――といった場合は、呼吸器内科の受診をおすすめします。
Q. 子どもがインフルエンザにかかり、そのあと私の咳が止まりません。
- ご家族から感染し、症状が軽いまま咳だけが残るケースはよくあります。ご自身がインフルエンザと診断されていなくても、咳が長引く場合は遠慮なくご相談ください。
まとめ
- 神戸市ではインフルエンザが昨シーズンより早く流行しており、2026年第41週の定点当たり報告数は14.03と注意報の基準(10)を超えています。
- インフルエンザのあとに残る咳の多くは「感染後咳嗽」で、時間とともに軽くなっていきます。
- 3週間以上続く咳、夜間の咳込み、喘鳴や息苦しさ、一度下がった熱の再上昇は、受診のサインです。
- 喘息やCOPDをお持ちの方は、ふだんの吸入治療を続け、ワクチン接種や「かかったときの対応」をかかりつけ医と相談しておきましょう。
「たかが咳」と我慢しているあいだに、咳喘息や喘息、COPDの悪化が進んでしまうこともあります。元町・三宮周辺で長引く咳にお困りの方は、どうぞお気軽にご相談ください。
ご予約・お問い合わせ
- WEB予約はこちら
- LINEで予約する
- お電話:078-945-7125
- WEB問診(来院前の入力にご利用ください)
神戸元町呼吸器内科アレルギークリニック
〒650-0012 兵庫県神戸市中央区北長狭通4丁目1-2(JR元町駅東口から徒歩1分・阪神元町駅東改札口から徒歩2分)
※ビルの2〜4階にあり、エレベーターはありません。院内ではマスクの着用をお願いしています。
- 神戸市感染症統合情報システム(2026年第41週 週報)https://kobecity-kmss.jp/
- 兵庫県「インフルエンザの発生状況」2026年10月15日発表 https://web.pref.hyogo.lg.jp/kf16/press/20261015.html
- 神戸新聞NEXT「インフルエンザ流行、予防対策を 兵庫県内で今季初の注意報レベル」2026年10月15日 https://www.kobe-np.co.jp/news/society/202610/0020931902.shtml
- 神戸市「インフルエンザの流行が始まっています」https://www.city.kobe.lg.jp/a73576/kenko/health/infection/protection/infuruenza/index.html
- 厚生労働省「令和8年度冬季 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2026.html
- 日本呼吸器学会「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019」(要点の解説資料:https://www.chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse3331.pdf)
- 日本呼吸器学会「気管支ぜんそく」(市民向け)https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/c/c-01.html
- 日本呼吸器学会 閉塞性肺疾患学術部会「COPD増悪予防と管理の実践」https://jrs.or.jp/comore-by2032/file/STEP2_COPD_yobou.pdf
- 環境再生保全機構「日常生活におけるぜん息悪化の要因」https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/knowledge/causes.html


